それからというもの、茂木さんはほぼ毎日私の所に来てくれていた。



茂木さんが部活に来る頻度も下がってきている今、少ししか喋れないけど・・・それが、私にとってとても大事な時間になっていた。



今日も来てくれるかな・・・、そんなことを考えながら、授業中に作ったお菓子を見つめる。



「ごめんね、由紀ちゃんいるかな?」



教室の前に現れる茂木さんに気付き、ガタッと立ち上がる。



そして、背中に作ったお菓子を隠しながら茂木さんの所へと駆けていく。



「はい、なんですか?」



「やぁ、由紀ちゃん。今日はどうだい?」



「!・・・別に、いつもと変わらないですよ。・・・でも授業でお菓子作ったので、コレあげます」



照れくさいけど、勇気をだして袋に入ったお菓子を茂木さんに突き出す。



本当は、私から茂木さんの所に行って渡したかったけど・・・やっぱりそれはハードルが高いことで・・・。



でも、なんでハードルが高い、なんて思うんだろ・・・。



「わぁ、本当?ありがとう、由紀ちゃん」



私の差し出したお菓子を見て嬉しそうにしながら受け取る茂木さん。



その顔を見てドキッと胸が高鳴る。



いつも見慣れている茂木さんの笑顔なのに・・・なんか、最近はすごく・・・すごく、輝いて見える。



「べっ、別に、いらないからあげるだけですから」



そっぽを向き、茂木さんから視線を逸らす。



なんでだろう・・・ドキドキして顔、見られない。



「・・・それでも嬉しいよ、ありがとう」



優しい口調で語りかけてくる茂木さんのことをちらっと横目で見る。



その表情は本当に嬉しそうに笑っていて・・・それでいて、少しだけ甘さを含んでいた。



なんで・・・なんで、そんな表情してるんですか?



そんなことを聞く勇気なんて、私にはない。



「形キレイだね、それに美味しそうだ」



当たり前じゃん、1番上手くできたものをあなたに渡してるんだもん。



「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。お菓子、ありがとう。大事に食べるよ。文化祭の準備、頑張ろうね」



「・・・はい、また」



少し寂しさを覚えながら、茂木さんに向かって手を振る。



会話をするだけでドキドキして、見かけるだけで胸が弾む。



別れる時は、寂しくなる。



だけど、それは二海くんを好きになっていた時にはなかった感情だった。



“恋愛感情”ではなく、“攻略対象”としての感情だったからだろう。



今、自覚した。



私は──茂木さんの事が好きになってる。



本性をさらけ出した、あの日から。