卒業式から1年が経ち、私達も卒業式を迎えた。



「由紀、卒業おめでとう」



「要さん来てたんですね、ありがとうございます」



「まぁね、待ちに待った彼女の卒業式なんだもん。来るに決まってるじゃん」



メガネを押し上げながら、嬉しそうに笑う要さん。



私が卒業したら同棲しようと約束をして以来、要さんずっとソワソワしてたからな〜。



「でも、由紀の制服姿を見れるのもこれが最後か・・・じっくり見納めしとかないとね」



そう言って、私のことを優しく引き寄せて抱きしめてくる要さん。



「ちょ・・・なんで抱きしめるの!?」



付き合ってから1年経つのに、いまだにこういうことをされるとドキドキしてしまう。



好きな人にこんなことされたことないから、どうしても慣れない。



「由紀だって俺の卒業式の時に抱きしめてきたじゃん」



「そ、それは若気の至りだから・・・!」



「あれから1年しかたってないよ?」



言い訳をしようにも頭が働かずすぐに論破できることしか言えない。



ぐぬぬ・・・と言い返せない代わりに要さんの事を睨みつける。



「・・・なに?そんな目で見てきて。キスされたいの?」



「そ、そんなんじゃ──」



“そんなんじゃないです”



そう言おうとした時、口を口で塞がれて喋れなくなる。



ゆっくりと離れていく要さんに見つめられ、恥ずかしさのあまりフイッとそっぽを向く。



本当、いつになっても慣れない。


「アハ、可愛い」



「う、うるさい、変態!」



「そんな変態に抱きついてみんなの前で告白してきたの誰?」



「・・・私です」



ポスッと要さんの肩に頭を預ける。



私だけ振り回されてるな〜・・・。



「どうしたの?」



「なんか・・・要さんっていつも余裕そうにしてるから・・・私だけドキドキしてるみたいで悔しいです」



「ふふふ、そんなことないよ」



頭を預けたまま素直に答えると、私の手を自分の胸に当ててくる要さん。



手に伝わってくる心音は、私に負けないぐらいドキドキと高鳴っていた。



「・・・余裕あるように見せてるだけ。俺もドキドキしてるよ。好きな子に抱きつかれて緊張しない男なんていないよ」



「・・・そうですか」



愛おしさが爆発しそうになり、要さんの抱きしめる腕にキュッと力を込めた。



いつまでも・・・このままでいたい。



そんな思いを込めて。



「離れがたいけど・・・そろそろ行こっか」



「・・・はい」



ゆっくりと離れ、手を繋いで要さんが運転してきた車へと向かう。



このままの関係でいたいな。



そう強く思いながら、車の中へと入っていった。



END