あれから1ヶ月が過ぎ、3月14日。
今、先輩たちは自宅学習に入り、登校していない。
つまりは、茂木さんに会う機会が無いというわけで・・・告白は出来ずじまいだった。
やばい・・・普通にやばい・・・。
ブーッブーッ・・・
そう考えている時、不意にスマホの着信が鳴る。
そこに表示されていたのは、茂木さんの名前だった。
スマホを勢いよく手に取り、電話に出る。
「コホン──はい、もしもし」
『“もしもし?俺、茂木だけど”』
咳払いをしてから電話に出ると、電話越しに茂木さんの声が聞こえる。
「どうしたんですか?」
『“いや、ちょっとね。ホワイトデーのお返しをしようと思って。今どこにいる?”』
「えっ!?今家ですけど──・・・」
ホワイトデーのお返しをしたいという茂木さんに驚きながら答える。
茂木さんがわざわざホワイトデーのお返しをするために電話してくれるなんて思ってもなかった。
『“良かった。あのね、今由紀ちゃんの家の近くの公園にいるんだけど・・・今から会えない?出来れば、直接渡したくて”』
「わ、分かりました。今行きます」
電話をしながら急いで家を出る支度をする。
そして、玄関を勢いよく開けて公園へと急ぐ。
走って公園まで行くと、茂木さんが立っているのがわかった。
しかも、今日はメガネをかけていて・・・いつもとは違う雰囲気の茂木さんに胸が高鳴った。
「・・・茂木さん、お待たせしました」
「あっ、由紀ちゃん。ごめんね、急に」
「いえ、ヒマしてたので大丈夫です」
茂木さんのところに駆け寄ると、私の方を向いて優しく微笑む。
その手にはラッピングの袋が握られていた。
「はい、さっき言ってたホワイトデーのお返し」
「あ、ありがとうございます」
差し出された袋を手に取ると、意外と軽かった。
中身、なんだろう。
「あ、そうだ。開けるのは家に帰ってからにしてね。ちょっと恥ずかしいから」
「?分かりました」
恥ずかしいことなんてあるか?
そんなことを考えながらラッピングの袋を見つめる。
「用はそれだけ。じゃあ、またね」
「あ・・・待ってください!」
そう言って立ち去ろうとしている茂木さんの腕をつかんだ。
伝えなきゃ・・・あなたが好きだって。
伝えて・・・それから・・・。
「!・・・どうしたの?」
「あ・・・えっと・・・あの・・・」
腕を掴んで引き止めたはいいけど、肝心の告白の言葉が出てこない。
「・・・・・・なんでもありません」
伝えなきゃと思いながらも、言葉に出来ず引き下がる。
あぁ・・・なんでこう、上手く言えないのかな〜!?
「・・・そう。それじゃ、またね」
「・・・はい、また」
少し不思議そうにしながらも、手を振って帰っていく茂木さん。
「・・・茂木さんのことが、好きです・・・」
小さくなっていく背中を見ながら、ポロッと本音がこぼれる。
顔を見なきゃ言えるのに・・・どうしても、茂木さんの顔を見ると伝えられない。
また機会、逃しちゃった・・・。