由紀side



『“それで?本命かって聞かれて茂木先輩がそうだといいなって考えた方ですって言って逃げてきたんだ”』



家に帰ってすぐ、いてもたってもいられずに茉弘に電話をしてさっき起こったことを洗いざらい吐き出した。



「そうなの〜!!やば〜い!!」



スマホを耳に当てながらベットの上でジタバタと暴れる。



すぐにバスに乗れるからという状況が私を少しだけ素直にさせてくれたせいで、とんでもないことを言ってしまった気がする。



茂木さんがどう受け取ったのかは分からないけど・・・私にとっては告白したも同然の行為な訳で・・・。



『“急に電話してくるから何かと思ったら、そういうことだったのね”』



茉弘に電話した時、“由紀、無事!?”って慌てて出たのを思い出す。



私が電話することがそんなに意外だったのか・・・?なんて思ってしまう。



私だってこんなことで電話したくなかったけど・・・いてもたってもいられなかったんだもん。



「ねぇ、これからどうしたらいい?」



『“どうしたらって・・・バレンタインにチョコあげた時点で告白してるようなものでしょ?”』



「それはそうなんだけどさぁ〜・・・!!」



茉弘の言葉を聞いてクッションに顔を叩きつけて唸る。



去年までは義理で渡してたしなんとも思わなかった。



なんなら、本命だと勘違いするバカがいてめんどくさいなとしか思わなかった。



だけど、今回は本命だ。



しかも、本命だと遠回しに伝えてしまっている。



これがなんとも思わないわけが無い。



『“もう気持ちはバレてるんだから腹くくって告白したら?OKもらえると思うよ?”』



「簡単に言わないでよ!そんなこと出来たら今頃してんのよ!!アンタだって二海くんに想い伝えるの四苦八苦してたくせに!」



『“私は自覚するのが遅かっただけで、自覚してからすぐに返事しましたぁ”』



まぁ・・・それもそうか・・・。



公開告白するようなやつだもんな。



それに比べて、私は──



『“それに、茂木先輩が卒業するまであと1ヶ月もないよ?そろそろやばいんじゃない?”』



「・・・わかってるわよ、そのくらい」



だから、焦ってるんじゃん。



今回も、ちゃんと告白したってわけじゃないから返事もらえるとは思ってないし。



いや、ホワイトデーにバレンタインのお返しはもらえると思うけど・・・多分、告白はされないだろう。



茂木さんは告白がトラウマになってるんだし、当たり前だよね。



期限は1ヶ月、か・・・。



それまでに告白、できるかな。