茂木さんの隣に立ち、バス停まで歩いていく。



もうすぐ着いてしまうというのに、いまだに渡せず終いだった。



手に持ったのはいいものの、どのタイミングで渡せばいいのか分からない。



タイミングを計っていたら、ついにバス停についてしまった。



「・・・そういえば、今日バレンタインだったね」



「えっ!?・・・えぇ、そうですね。クラスの男子が浮かれてましたよ」



その話題が出されるとは思わなくて、思わず声を上げてしまう。



茂木さん、どんな気持ちでこの話題出したんだろう。



「・・・俺、今年は0個なんだよね」



「・・・・・・え?」



茂木さんが、0個?



だって茂木さん、去年は紙袋2つぐらい抱えて持って帰ってたじゃん。



なんで・・・。



「もらえるかな〜って思ってた子からもらえなくてね。今年は諦めるしかないかな」



「・・・へぇ、そうなんですか。可哀想だこと」



フイッと視線を逸らしながら、持っていた包みをキュッと握りしめる。



そして、勢いよく茂木さんの前に突き出した。



「由紀ちゃん、コレ・・・」



「も、茂木さんが可哀想なので、余ったチョコ分けてあげます」



嘘だ。



本当は、茂木さんにしか用意してない。



だけど、素直に言うことが出来ずに思わず口に出してしまう。



「ふふっ、ありがとう。これで0個は免れたよ」



差し出されたチョコを受け取って、嬉しそうに微笑む茂木さん。



そんな姿にキュンッと胸が締め付けられた。



「これ、手作り?すごいね」



「べ、別に!こんなのテキトーにやればできます」



本当は、これも嘘。



何日も前から練習して、上手くできたものを詰めた。



「本当に、俺がもらっちゃっていいの?」



「はい、どうせ持ってても食べきれないので」



違う、そうじゃない。



茂木さんに食べて欲しくて持ってきたんだって、なんで言えないのかな。



「ありがとう、今食べてもいい?」



「・・・どうぞ」



嬉しそうに包みを見つめる茂木さんは、ウキウキとしながら中身を取り出して1口食べる。



そして、すごく美味しそうな表情をして2つ目を食べ始めた。



良かった、美味しそうに食べてる・・・渡せて良かった。



・・・まぁ、渡せたのは良かったけど・・・渡し方がアレってどうかと思うけど。



「ねぇ、聞いていい?」



「なんですか?」



パクパクと食べながら私の方を見つめる茂木さん。



その姿が可愛くてしかたがない。



「・・・これって・・・どっち?」



「どっちって・・・なにがですか?」



茂木さんの言葉の意味がわからず、頭にハテナが浮かぶ。



すると、茂木さんは少し照れくさそうにしながら頬をかいた。



「・・・本命か、義理か。・・・どっち?」



「っ・・・!?えっと・・・」



答えるのを迷っていると、バスが来て目の前に止まる。



早く乗らないと・・・。



「・・・なんてね。別に答えなくて──」



「茂木さんがこうだといいなって考えた方です!!」



「──え?あ、ちょっと、由紀ちゃん!?」



そう言い残して、バタバタと急いでバスに乗った。



やばい・・・顔が熱い。