翌日──



待ち合わせ時間の10分前に駅前に到着する。



間に合わないかと思って急いで来たけど、まだ茂木さんは来ていなかったみたいだ。



走ったせいで乱れた前髪を整えながら、ワンピースの裾を直す。



家を出るギリギリまで悩んだけど・・・この格好変じゃないかな?



近くの鏡に映っている自分の姿を確認しながらそんなことを考える。



今までなら即決で服装決めてたのに、今日はかなり時間をかけてしまった。



「ねぇ、お姉さん1人?」



茂木さんを待っていると、突然知らない男の人に声をかけられる。



え、誰・・・。



私の知る限り、こんな知り合いは居ない。



「良かったら俺とデートしない?楽しませる自信あるよ」



「・・・・・・」



なんで知りもしない人とデートなんかしなきゃいけないのよ。



私は今から好きな人とお出かけなんだっつーの。



そんな思いで男の人の問いかけをガン無視する。



「ねぇ、聞いてる?お姉さんに声掛けてるんだけど。もしかして人見知り?」



「・・・・・・」



私が無視してもしつこく声をかけ続ける男の人。



いい加減にして欲しい。



「ねぇ──」



男の人が口を開こうとした時、後ろから肩に手が伸びてくる。



そのまま後ろに引っ張られ、トンッと何かにぶつかるのと同時に、ふわっと嗅いだことのある匂いが鼻をつく。



「俺の彼女に、何か用ですか?」



聞き覚えのある声が私の耳元で聞こえてくる。



こ、この声──



「も、茂木さん・・・!?」



後ろを向くと、そこには少し不機嫌そうな茂木さんが私のことを後ろから抱きしめていた。



それに気づいた瞬間、ドキドキと心臓が高鳴り始める。



しかも茂木さん、私のこと彼女って言ったよね!?



そんなこと言われると意識しちゃうんだけど!?



「・・・ちっ、彼氏連れかよ。リア充め」



茂木さんが現れたことによって、声をかけていた男の人は退散していく。



その男の人が視界からいなくなったのを確認してから、茂木さんがゆっくりと離れた。



「ごめんね、待たせちゃって。大丈夫だった?」



不安そうな表情を浮かべながら私を見つめる茂木さん。



「だ、大丈夫です。ただ話しかけられてただけなので」



「・・・そう、よく耐えたね」



ホッとしたような笑みを浮かべる茂木さんは優しく私の頭を撫で始める。



前にもナンパされたって言った時、頭を撫でられたけど、あの時とは違って凄く恥ずかしい。



だけど、心地いいとも思ってしまう自分がいた。



「次はもっと早く来るようにするよ」



次はってことは、またお出かけしてくれるってこと・・・?



そんなことを考えていると、茂木さんは私の手に自分の手を重ねてくる。



「っ・・・!?茂木さん・・・!?」



急なことに驚いて茂木さんのことを見る。



「人が多いから、はぐれないようにしないとね」



優しくて、それでいて有無を言わさないような笑みを浮かべている茂木さん。



は、はぐれないように手を繋ぐって・・・まるで恋人みたいじゃん!!



待って・・・緊張してるから手汗やばいと思うんだけど!?



もしかしてこのまま!?



「さ、行こ」



内心焦っている私の事なんてお構いなしに歩みを進める茂木さん。



そんな彼の後をついて行った。