片付けが終わり、帰り支度を始める。



茉弘は二海くんと帰るみたいでバタバタと準備をして出ていってしまった。



本当、(せわ)しない子だな・・・。



そんなことを考えながら荷物を背負い、私も部室を後にする。



今日は迎えに来れないと言われたからバスで帰ることになった。



最近暗いからバス停まで行くの嫌なんだよなぁ。



「あれ?由紀ちゃん、今帰り?」



そんなことを考えていると、後ろから声をかけられる。



由紀ちゃん呼びってことは──茂木さんかな?



そう思って振り返ると、そこには茂木さんが自転車を押して私の方へ駆け寄ってくるところだった。



「茂木さん。はい、今日は迎え来れないみたいなんでバスで帰ろうかと」



「そうなのかい?じゃあ、バス停まで送っていくよ。暗いから1人だと危ないし」



「えっ・・・はい、お願いします」



思ってもみない提案に、一瞬ためらってから返事をする。



まさか茂木さんが送ってくれるなんて思ってもみなかったから、嬉しさのあまり頬が緩む。



ここからバス停までは歩いて5分ぐらいのところにある。



その間は私が茂木さんを独占できるってことでしょ?



「茂木さん、自転車ですか?いつもは電車ですよね?」



「えへへ、そうなんだけど・・・部活引退してから贅肉が増えちゃってね、少しでも運動しよっかなって」



自転車を押しながら私の隣を歩く茂木さんは、少し照れたような顔をしながら頬をかいた。



贅肉が増えたって・・・それ多分、筋肉が少なくなっただけな気がするんだけど・・・。



でも、そんな姿さえも愛おしいと思ってしまう。



「練習中は散々動き回ってましたからね。そればかりは仕方ないですよ」



「うん、わかってるけどね・・・さすがにあれだけあった筋肉が徐々になくなってくのがちょっとショックで・・・」



あはは・・・と困ったように笑う茂木さん。



そんな姿でさえ、キュンとしてしまう。



「・・・元々ありすぎるぐらいだったし、ちょうどいいんじゃないですか?そのくらいで」



「そうかな?・・・由紀ちゃんがそう言うならいいか」



フォローの言葉を言うと、嬉しそうに目を細める茂木さん。



なんでそんなに嬉しそうなんだろう。



そんなことを考えているうちに、バス停までたどり着いてしまった。