由紀side



部活が終わり、部室に行って後片付けを始める。



部活中は茂木さんが視界に入るたびにさっきのことを思い出してドキドキしちゃって全然集中できなかったな。



だから、いつもはやらないようなミスもあったし・・・。



「由紀、今日どうしたの?なんかいつもと様子違うけど・・・もしかして、茂木先輩のこと?」



「・・・アンタに気付かれるとは思わなかったわ。・・・そうよ」



作業中に茉弘が声をかけてくる。



こんな鈍感な茉弘に気づかれるってことは──他の人にもバレバレなんだろうな。



「なにかあったの?」



「何かって言うか・・・ちょっと、刺激の強いことを言われたっていうか・・・」



「え!?なになに!?なんて言われたの!?」



「・・・ちょっとアンタ、食いつきすぎじゃない?」



目をキラキラさせて食い気味に聞いてくる茉弘に、思わず引いてしまう。



茉弘、こういう話題好きだったっけ?



当人になるとポンコツに成り下がるのに・・・。



「そんなこと別にいいじゃん!で、どうなの?何言われた?」



「うっ・・・・・・彼女にするなら、私みたいな子がいいって・・・」



「えっ!?なにそれ〜!!唐突すぎ!!どうしてそんな話題になったの!?」



観念して部活中に言われたことを茉弘に伝えると、ウキウキしながら深掘りしてくる。



アンタと二海くんのバカップルっぽい会話をみてたからだよ。



「アンタ達2人のやり取りを見て、恋人欲しいなって話になったんだよ」



そうツッコミたくなるのを我慢して、オブラートに包んで話す。



それから、私が思っていたことと、似たようなことを言われた。



どういう意味かと聞いたら、そのままの意味だって言われて・・・。



そのことを茉弘に伝えると、嬉しそうに笑った。



「そっか、それで仕事にてがつかなくなっちゃったんだ・・・。由紀なら、そういうこと言われ慣れてそうだから気にしないと思ってたけど?」



「慣れてるわけないでしょ!?モブには何回も言われたけど、好きな人に言われたことなんて無いんだから!!」



マドンナと呼ばれていた時は、よく知りもしない人から言われることは良くあった。




だけど、本命の人から言われることなんてなかった。



それに──本気で人を好きになったのが茂木さんが初めてなんだから、どう反応していいのかなんて、わかんないもん。



「・・・知らない人のこと、モブっていうのよくないと思うよ・・・?」



少し困りながらも、私の言葉に反応する茉弘。



仕方ないじゃない。モブはモブよ。



「でも、まぁそうだよね。好きな人に言われるのと、そうじゃない人に言われるのじゃ破壊力が違うよね」



本当にその通りだ。



そこら辺の人に言われるのと、茂木さんに言われるのじゃ、天と地ほどの差がある。



なんとも思ってない人に言われる言葉なんて、どうでもいいし、なんとも思わないけど・・・。



「ホントよ。・・・なんで急にあんなこと言い出すんだか・・・」



「──由紀の事が好きだからじゃない?」



「はぁっ!?」



茉弘の言葉に、思わず声を上げる。



茂木さんが・・・私のことを好き!?



いや、確かに本性バレた時私のこと好きって言ってたけど・・・。



あれって、私をなぐさめるための言葉じゃないの!?



「そ、そんなことあるわけないじゃない!」



「あはは、どうだろうね」



「どうだろうねって・・・茉弘まで茂木さんみたいなこと言わないでよ!」



あの時も、“どうだろうね”って言ってはぐらかそうとするし!



もういっその事、その気があるなら告白して欲しいもんだ。



・・・その気があるなら、だけど・・・。



まぁ、無いか。



だって、猫を被ってない私なんか可愛くないもん。



わかってる、わかってるけど──どうしても、期待してしまう。