あれから成海は僕に話しかけるようになった。

「碧流、次の数学の小テストの範囲ってどこだったっけ?」

許可した覚えはないのに、彼は僕のことを名前で呼んできている。

「成海、この間に話してた漫画の新刊が出たんだけど」

そんな彼に対抗してと言うのはおかしいが、僕も名前で呼ぶことにした。

向こうだって僕のことを名前で呼んでいるんだから、僕も別に名前で呼んでもいいはずだ。

そう言った経緯から僕と成海は友達になって、それから10年以上も彼と友人関係が続いていると言う訳である。

「ーー成海、お姉さんいるんだ」

その年の秋に成海の口から3歳上の姉がいることを知って、その人と出会ってつきあうことになるのはそれから先の話である。