その日の授業が終わると、
「髙嶋、一緒に帰ろう」
と、成海が声をかけてきた。

僕の事情が知りたいと言うのが大半だろうと思ったが、断ると周りからの反応ーー特に永井成海ファンの連中ーーが怖いので一緒に帰ることにした。

「えっ、反対方向なの?」

僕と一緒に門を出て歩きながら、成海は言った。

「隣の区から通っているんだ」

そう返事をした僕に、
「何でわざわざ隣から…」

成海は信じられないと言った様子だった。

そんな反応されるのは当然のことか。

「家庭の事情って言うヤツだ」

「…それに関しては聞かないことにするよ」

そこら辺の線引はされているみたいで何よりだった。

まあ、僕も同じことを他人から言われたら同じことを言うだろうな線引するだろうな。