「デートの待ちあわせ時間は夕方の5時で、原稿の仕上げをするために徹夜して朝の7時まで頑張って何とか出せて…起きたら4時でビビったよね」

それから大急ぎで準備をして碧流くんとの待ちあわせ場所へと向かった私は我ながらたいしたもんだ。

…まあ、若いからできたことなんだと言う話ではあるけれど。

「って、昔のことを振り返ってる場合じゃない!」

早く進めないと猶予の30分が終わってしまう!

私はタブレットの画面に集中すると、キーボードをたたいて文字を打った。

「碧流くんには言えないよね…」

まさか、自分の奥さんが“自分の夫と実の弟をモデルにしたBLを書いている”なんて言えないよね…。

「言ったら間違いなく気持ち悪がられるわ…」

この秘密は絶対に黙っておこう墓場まで持って行こうと、心の底から思った。