その顔から逃げるように、
「ただいま、碧流くん」

私は返事をすると、足元に視線を向けた。

「…成海、きてるんだ」

茶色のブーツに視線を落とした私に、
「きていますよ」

碧流くんはどこか不服そうに言った。

そうか、今日は金曜日だったな。

晩ご飯を食べにここへきても当然のことよね。

そのうえ実家を出て1人で生活をしているので自分だけとは言え、食事の用意をしたくない日もあるだろうし、寂しいその家に帰りたくない日だってあるだろう。

こう言う職業をしていると曜日の感覚がわからなくなってしまうので本当に困ってしまう。

でも、成海が家にきているならばいろいろと都合がいい。

ニヤリと笑いそうになる口角を隠すようにしてうつむくと、私はミディアムブーツのファスナーに手をかけた。