ふと考えた。ここはいじめられ亡くなったと言われている少女がまだこの備品倉庫を使っているという噂。
いやいやそれはないだろうと思いつつ、樹は本当に花恋がここのいじめられて亡くなった幽霊だとすれば…?
「樹?何ぼーっとしてんの?バカみたいな顔して」
「ああ?!」
こいつ、無意識に人を煽りやがる、と樹は花恋に対し嫌悪感をすぐさま抱いてしまった。誰だとしても樹は煽られることが特に毛嫌いしているものだから、相当な怒りを買った。樹は煽りに対しあまり対応できないのだ。

 そして一限目。なぜか花恋もついてきた。どうやら校内、いや学校の敷地内では自由に動けるのでこの溯波高校に対して強い思入れがあるのだろう。そりゃあそうだよな、と樹も同情した。いじめに遭い、孤独死してしまったので、友達もおらずそのまま静かに亡くなっていったのだから。自分を惨めでみっともないと、そう感じたのであればもう何も花恋に何も言えないのかもしれない。
「……うそ、」
教室を見回していた花恋の目に止まった人。一体誰なのか目線の先を追う。
「、小百合」
花恋は小百合を見た瞬間時が止まって動いたと思えば動揺し、怯えていた。
小百合は一年の時先輩をいじめたのだとか、評判は散々だった。実際2年になった今でもあまり良い話は聞かない。
「どうしたの樹くん?」
「え、あ、別に何もねえ、」
小百合と花恋に接点があるのだとしたら、いじめていたことしか多分接点はないはずだ。でもなぜ小百合が花恋をいじめなければいけないのだろうか。どうしてもそれが分からず頭を抱えた。
「なんで小百合がいるの…?」
怯えに怯え、もうすぐ正気を失いそうまである花恋を樹は気にかけた
 一限が終わるとすぐさま人気のいない所へ行き花恋に小百合と何があったのか、話してもらうことにした。
「小百合との接点はあるのか?ほら、いじめられてたとか」
「ある、……実はさ、備品倉庫に閉じ込めたのも小百合本人で、」
「はっ……?」
最悪だ。小百合がそこまでしていたとは知らなかった。実質花恋を殺したのは、小百合本人じゃないか。孤独死なら証拠も何も見つからないから小百合が閉じ込めた張本人だってことはバレにくい。指紋がついているところはドアしかないのだろうけど、数日、数十日経っていれば指紋も上書きされているはずだ。部活の備品を取りに行くから。
「花恋、もしかして小百合がまだいじめていたこと知られてないの、嫌か」
「そりゃあそうでしょ、実質殺したのって小百合じゃんか」
この幽霊が花恋以外なら絶対樹は協力しなかったはずであろう。バスケに熱中したいこともあり、夏休み、8月にはもうインターハイを控えている。ここで協力していたら、インターハイではレギュラーとして出してもらえないかもしれない。
「樹バスケ部なんでしょ。私女バスしててレギュラーだったから教えれることはできると思うよ」
「乗った。てか、花恋女バスだったんなら早く言えよ。」
「いや、もうバレーしないかなって思って!」
少し申し訳なさそうに花恋が笑った。非現実的だけど、俺は花恋に手を貸してどうにか小百合がいじめていたこと、全部明かしてやろう。
小百合が男を落とすため手段を選ばないように、俺も小百合を犯人と明かすためなら手段を選ばない。流石に小百合のしたことは警察に捕まったとしても、仕方がない、いやもっと重い罰を受けてもらわないと花恋は気が済まないだろう。
「ちょっと樹、そこまでする必要性ないから!ってか気が済まないって何?!私そんな腹黒いやつとか思われてたわけ?」
「え、声出てたか?つーか、花恋そんくらいしねえと、 いじめられて辛かったんだろうが」
「いやそうだけど、!小百合が捕まったり警察に怒られたりした時でもう樹が頑張ってくれてるんだし、別にいいよ」
「お前いい子ぶんなよ」
「ぶってないし?!?!?!」
まずは花恋の部活届がないか確認しないと、実際にいたか分からない。もしかしたら田戸先輩が知っているかもしれない。