少し離れればいいだけなのに何故か抱きしめてくる和泉は。
何を考えているのかよく分かりません。
「そうだ、この後部活あるから早めに抜けるね……」
足音が無事に通り過ぎた頃。
私の心臓はドキドキからバクバクへと変わっていた。どうやら通り過ぎた生徒は私の存在に気づかなかったらしい。
そのことにほっとしつつも、頭の中は和泉のことでいっぱいだった。
「……行ったか?悪いな、こんなことして」
「だ、大丈夫……」
和泉はようやく私から離れると、謝る。
大丈夫、と口では言ったけど全然大丈夫じゃない。こんな和泉を見たのは初めてで。
こんなに暖かい温もりを感じたのも久しぶりで。
なんだか、胸がいっぱいいっぱいだった。
「あー……文化祭の準備どう?」
気まずい空気の中。
和泉は話題を変えた。そっちから仕掛けてきたのに。何故か私よりも顔を赤くして。
不思議な気持ちになった。