にやぁ、と嫌な笑みを浮かべながら私に近づく和泉。
その和泉を避けようと後ずさりするけど背中が壁に当たってしまい、逃げ場を失った。
「べ、別に和泉の名前言ったわけじゃ……」
「ふーん?じゃ、なんで真夜はこんなに顔真っ赤なんだ?」
「……へ?」
意地の悪い和泉は、私の顎を持ち、クイッと上げる。和泉に言われるまで気づかなかった。
自分の顔が熱くて、真っ赤になっていること……。
「あ、赤くなってない!それより人が通ったらどうするの!離れて」
恥ずかしくて、顔を思い切り背けようとする。なんでいつもこうなっちゃうの。
油断した。
「誰もいないから大丈夫。それに、離れるわけねぇだろ?目の前に……」
「な、何よ」
変な空気に耐えていると和泉が急に黙り込む。不思議に思った私は思わず突っ込んだ。
「いや、なんでもねぇ」
だけど、私が尋ねると元に戻る。
いったいなんだったの……?