「……いってぇ……」
気づいたら、和泉は目に涙を溜めて左頬をさすっている。
ハッとして自分の手を見ると右手がジンジンと熱くなっていた。……また、和泉を平手打ちしてしまった……。
そう。乾いた大きな音は、私の平手打ちの音だった。
「相変わらず馬鹿力……」
「う、うるさい!あんたが悪いんでしょ!私をからかうから!」
和泉にからかわれるといつもこうなってしまう。結局最後は私にぶたれて終わり。
……なんていう展開でいつも終わるの……。
心の中でため息をついた。
ーーガラッ。
「おーい。なんかすごい音聞こえたけど……あー」
「ひゃあ!か、勝手に入ってこないで!」
誰も居ないと思って油断していた。突然ドアが開き、そこには生徒会メンバーの綾瀬零都(あやせれつ)がいた。
彼は私と同い年で、書記を務めている。とても優秀で頭が良い人だ。
「悪い。大きな音が聞こえたからつい。でも、まぁなんの音か察しはついた」