私は慌てて否定する。
「おい、あんまいじんなよ」
和泉はそんな美晴に言い返す。
私ははぁ、とため息をついて資料に目を落とす。どこからだっけ……と内容を確認していると、ふと下に置いていた左手に何かが重なる。
私はそのことに気づき、そっと視線を動かす。
ーードキッ。
その見えたものが信じられなくて私の心臓は大きく跳ね上がった。
だって……。
和泉の手が、私の手を握っていたから。
優しくて、大きくて、暖かい手。別に今まで握ってきたのに。みんながいるこの空間で握られているせいか、いつも以上にドキドキしてしまう。
「会長?」
「え、あっ。えーっと……」
零都に呼ばれるまでまた黙り込んでいた。私は慌てて資料をめくる。ドキドキと騒がしい心臓をおさめながら。
和泉は一向に手を離してくれない。
みんなに気づかれないように進めるけど。頭の中はそれどころじゃなかった。