どことなく危険な香りが漂うようなところ。夜はあかりがつくけど、かなり雰囲気が出る。
ーーブォンブォン……。
隅っこで息を潜めているとどこからかバイクの音が聞こえた。私はハッとして顔を上げると、そこにはバイクに股がった1人の男の人がいた。
「真夜、お待たせ」
その人物は、ヘルメットを取るとバイクから降りる。ヘルメットから顔を出したのは和泉だった。
その姿は何度も見たことあるのに心臓がドキドキと騒がしくなる。
……これは違う。恋とかじゃないドキドキ。いつもとのギャップの違いにドキドキしてるの。
と、訳の分からない言い訳を並べる私。
「真夜?」
和泉は、そんな私を不思議そうに見ている。
「お、遅かったじゃない」
「悪かったな。西園寺がうるさくてよ、足止めくらってた。雷華は西園寺のことを無視してるしな」
ドキドキを誤魔化そうと咄嗟に出た言葉はあまりにも素っ気ないものだった。