肘置きに頬杖をつき、目だけでわたしを追う彼の目の前に立ち、気圧されそうなほど強い眼差しの赤い瞳と目を合わせると、それから少しもそらさずに笑顔で歌い続けた。
わたしを見て、聴いて、好きになって。
ほんの少しでいいから、あなたの『好き』の気持ちをちょうだい。
その1ミリの愛で、わたしは生きていけるんだから!
最後の一小節を歌い終わり、同時にピタリと身体も止まる。
はあはあと肩で息をするわたしを、王子様がじっと見つめている。
やがて、後ろからぱちぱちと控えめな拍手が聞こえてきた。
振り返ると、OLさんがうんうんと頷きながら拍手を送ってくれていた。いい人すぎる!
「あっ、ありがとうございます!!」
「素晴らしいパフォーマンスでした」
「聞いたことない歌だったけど、上手かったねぇ〜」
「ありがとうございますっ」
縦ロール美少女もOLさんの横でニコニコしながら言ってくれた。
「殿下はどーでしたぁ?」
その言葉にドキッとして、おそるおそる振り返る。
王子様は相変わらず何を考えているかわからない冷めた顔をしていたけど、わたしと目が合うとフッと目を細めた。
「なかなか新鮮で面白かったな」
想定の100倍好評価だ! わたしはガバッと頭を下げて「ありがとうございます!」とお礼を叫ぶ。
「あんな踊りは初めて見た。お前の世界ではあれが普通なのか」
「はっ、はい。わたしの世界にはアイドルという職業がありまして、他にも色々な歌や踊りがあります。もっとカワイイに全振りしたのとか、激しくて格好いいのとか……」
「へえ。お前は踊れるのか?」
「おっ、踊れます! いくらでも! 殿下のためになら!! いつでもどこでも!」
わたしが犬だったら、しっぽをぶんぶん振って飛びついていただろう。そのくらいの勢いで猛アピールするわたしに、王子様はくっと喉の奥で笑って「そうか」と言った。