「来たか」


客間の中心に配置された椅子には昨日の俺様王子がどかりと腰掛け、その後ろには藍色の長髪を後ろでひとつに束ねた知的そうな美丈夫が立っていた。


「適当に座ってくれ」


王子に促され、わたしと恵梨さんは王子の向かいの席に腰掛けた。

改めて目の前にした王子様は、今日見た王宮の人々と明らかに一線を画すオーラを放っていた。

暴力的なまでの美貌と、堂々とした佇まい。まとう空気が違う。これが本物の王族……。

好奇心より畏怖が勝ってしまう。昨日のわたしはよくこんな貴人の前で踊れたものだ。



「あー……ではまず、自己紹介から始めるか」



王子様はどこか気の抜けた声色で話し始めた。


「俺の名はエイデン・ホワイト。このギルヴァント王国の第一王子だ」


第一王子。となると王位継承権第一位のお方。次代の王様じゃないか。

見たところまだ20代前半くらいだろうけど……納得の落ち着きと貫禄だ。


「で、こっちが側近のウィル」

「ウィル・スイートマンと申します。家は公爵の爵位をいただき、代々王族の皆様にお仕えしております」


こ、公爵令息……。爵位の中ではトップのはずだ。王子の側近となればそりゃそうか。この人……ウィル様もまだ若そうなのに、落ち着きが20代のそれではない。


「で、そこの女がシャーロット。あんななりだが王宮筆頭魔術師だ」

「あんななりとはヒドイですねぇ〜。はーい、改めましてシャーロットちゃんです。魔法のことなら大体なんでもわかるから、困ったことがあったら聞いてねぇ」


王宮筆頭魔術師……!聖女の召喚に携わるくらいだから相当の実力者だろうと思っていたけど、まさかそこまでとは。


内なる興奮を抑えきれないわたしの横では、恵梨さんが困惑した顔で皆さんの紹介を聞いていた。