恵梨さんも同じだったのか、食事もそこそこにふたりでも余裕のあるキングサイズのベッドに倒れ込んで泥のように眠った。



ーーああ、これ、やっぱり夢だったりしないかな。

目が覚めたらいつもの天井で、『ああ夢だったかあ、よかったあ、でもちょっと残念だなあ』なんて思ったりして。というわたしの願いは叶うことなく、異世界で初めての朝を迎えた。

メイドさんのモーニングコールつきで。



「起きてください。朝ですよ」



まぶたを開くとソフィアさんの美しいグリーンの瞳と目が合って、寝ぼけた頭でここが日本ではないことを思い出した。


「……ハイ、おはようございます……」


社会不適合者の夜型人間ことわたしは朝に弱い。

のそ……と亀のスピードで起き上がると、すでに身支度を終えているらしい恵梨さんが見えた。


「おはようございます」

「え、あ、おはようございます……」

「朝食の用意が出来ているとのことです」

「……え、もしかしてわたしを待ってくださってた感じですか」

「早起きが身体に染み付いているだけですから。気にしないでください」

「うわあすみません……。急ぎます……」


社会人である恵梨さんのしゃっきりとした佇まいが眩しい。

ソフィアさんが渡してくれた洋服に着替え、促されるまま鏡台の前に座ると、もう一人の侍女であるベラさんが髪を整えて軽く化粧をしてくれた。

あっという間にいいとこのお嬢さんが出来上がった。すごい。


「このワンピース、ソフィアさんが選んでくださったんですか!?」

「え? ええ、そうですが……」

「すっごく可愛いです!ありがとうございます!」

「いえ……お褒めにあずかり光栄です」

「ベラさんも!あっというまにこんな編み込みしちゃうなんてすごいです〜!!」

「ウフフ。ありがとうございますわ」


ニコニコ微笑ましいものを見る目でわたしを見るベラさんに対し、ソフィアさんは居心地悪そうだ。もしかして照れてるのかな。