ガッシャン!!
工場の入り口のほうから大きな音が聞こえてきて反射的に振り返る。
入ってきたシャッターが、無理やり力を入れられたかのように変形していた。
そして壊れたシャッターの隙間から入ってきたのは……
「りっくん……」
肩で息をし、大量に汗を流している理玖の姿だった。
彼は工場内を見回し優里の姿を見つけると、安堵したように目元を緩ませた。
「ゆうちゃん、やっぱりここにいたんだね」
そう言って優里のもとへ近づこうとする理玖だったが、工場内に散らばっていた男たちが次々に怒声をあげた。
「てめえ勝手に入ってきてんじゃねーぞ!」
「魔王様の登場ってわけか! この間の落とし前どうつけてくれるんだよ?」
一気に緊迫した空気が漂い始めたが、そんな彼らを理玖はめんどくさそうに一瞥すると、優里に聞こえるように大きな声を出した。
「ゆうちゃん! 目を閉じていて」
その言葉に従いギュッと目を閉じ、耳を両手でふさいだ。
そして実際はそれほど長い時間ではなかったはずだが、とてつもなく長く感じる時間を過ごしたのち、肩にそっと手が触れるのを感じた。
「もう大丈夫だよ」
そんな理玖の落ち着いた声がすぐそばから聞こえてきて、優里は涙目になりながら顔を上げる。
理玖は服こそ多少乱れているものの、特にケガもなさそうな様子でそこに立っていた。
「りっくん! ケガしてない!? 大丈夫?」
「うん」
咄嗟に心配の言葉が口をついた優里のことを見つめて理玖が嬉しそうに笑う。
恐る恐る振り返ると、工場内にいた男たちは軒並み倒れており、呻き声をあげているものの、彼らの中にもひどいケガをした人はいなさそうだ。
理玖は優里の隣に立っていた健太郎を一瞥する。健太郎も無表情のまま理玖を見つめ返し、彼らは視線を一瞬交わしたが、結局言葉を交わすことはなかった。
「ゆうちゃん、行こ」
「う、うん……」
痛くはないが、有無を言わさないような力で理玖が優里のことを引っ張る。
それにつられて一歩を踏み出しかけた優里だったが、足に力を入れて踏みとどまると、健太郎のほうに向き直った。
「健太郎くん、ごめんね……ありがとう」
「…………」
それだけで、優里の意図は伝わったらしい。健太郎はその場に立ち尽くし、無言のまま優里たちを見送ったのだった。
工場の入り口のほうから大きな音が聞こえてきて反射的に振り返る。
入ってきたシャッターが、無理やり力を入れられたかのように変形していた。
そして壊れたシャッターの隙間から入ってきたのは……
「りっくん……」
肩で息をし、大量に汗を流している理玖の姿だった。
彼は工場内を見回し優里の姿を見つけると、安堵したように目元を緩ませた。
「ゆうちゃん、やっぱりここにいたんだね」
そう言って優里のもとへ近づこうとする理玖だったが、工場内に散らばっていた男たちが次々に怒声をあげた。
「てめえ勝手に入ってきてんじゃねーぞ!」
「魔王様の登場ってわけか! この間の落とし前どうつけてくれるんだよ?」
一気に緊迫した空気が漂い始めたが、そんな彼らを理玖はめんどくさそうに一瞥すると、優里に聞こえるように大きな声を出した。
「ゆうちゃん! 目を閉じていて」
その言葉に従いギュッと目を閉じ、耳を両手でふさいだ。
そして実際はそれほど長い時間ではなかったはずだが、とてつもなく長く感じる時間を過ごしたのち、肩にそっと手が触れるのを感じた。
「もう大丈夫だよ」
そんな理玖の落ち着いた声がすぐそばから聞こえてきて、優里は涙目になりながら顔を上げる。
理玖は服こそ多少乱れているものの、特にケガもなさそうな様子でそこに立っていた。
「りっくん! ケガしてない!? 大丈夫?」
「うん」
咄嗟に心配の言葉が口をついた優里のことを見つめて理玖が嬉しそうに笑う。
恐る恐る振り返ると、工場内にいた男たちは軒並み倒れており、呻き声をあげているものの、彼らの中にもひどいケガをした人はいなさそうだ。
理玖は優里の隣に立っていた健太郎を一瞥する。健太郎も無表情のまま理玖を見つめ返し、彼らは視線を一瞬交わしたが、結局言葉を交わすことはなかった。
「ゆうちゃん、行こ」
「う、うん……」
痛くはないが、有無を言わさないような力で理玖が優里のことを引っ張る。
それにつられて一歩を踏み出しかけた優里だったが、足に力を入れて踏みとどまると、健太郎のほうに向き直った。
「健太郎くん、ごめんね……ありがとう」
「…………」
それだけで、優里の意図は伝わったらしい。健太郎はその場に立ち尽くし、無言のまま優里たちを見送ったのだった。