『ねぇ君、昼食一人?寂しいね。お友達は?
 僕も暇だからさー。よかったら一緒にどう?』
いきなり何?!と思えば、呑気に話しかけてきたのは
隣のクラスの転校生〈股貫 瀬戸基(またぬき せとき)〉くんだ。
ヤリチンを徹底的にぶちのめしてきた、“ヤリチン殺し”としてその名を知らしめている。
噂によると、自らもヤリチンにならないように
二次性徴期手前で去勢したらしい。
『いや、これから親友とお弁当…』
『驚かせちゃってごめんね。初めましてなのに、こんな馴れ馴れしくて。運命ってやつ?あはは』
私の返事は耳クソにバリアされたようだ。
それにしても、よく喋る人だ。
(声色も目元も、初恋の人に似てる…(野獣…))
私は戯けたように首を振りつつ仕方なく話に乗った。

『そうですねー。こっちのクラスまで来るなんて何か用事があるのかと思っちゃいました(笑)』
『本当に申し訳ないっ!実は、隣のクラスにめっちゃ可愛い子が居るって、男達の間で噂になっててさ。入った途端君が目に入って。僕、女の子には弱いから(笑)』
確かにルックスだけは私の取り柄だ。ただ、この言葉を3年前に受けていたら、確実にシバき倒すだろう。
でも、今は、ちょっとドキドキしている。
何故なら、父親もおらずに野獣ぐらいしか男を知らない私にとって未知の存在だったから。

《男なんて、金タマのシワで迷路してるような連中なんだよ。》突如ゆいの言葉が頭を過る。
ふふ…やっぱそんなわけないじゃん。
『じゃあ、一緒に食べよっか。』『うんっ❤︎』
私はまだ、純情だ。