私だって落雷直撃レベルの低い確率に期待しているわけではない。

 これでも私は『肉巻きおにぎり系女子』なのだ。例えペラペラでも、一応肉を纏っている。数ヶ月前までは、自力で結婚相手を探そうとして、それなりに頑張っていた。

 例えばこれが、単純に田中さんに恋をしているだけだったとしたら、太刀打ちできないとわかった時点で諦めていたと思う。まあ、この諦めの早さがペラペラの所以でもあるのだが‥‥

 それが今回、田中さんのおかげで私が仕事を楽しめるようになったことで、簡単に諦めることができなくなってしまったのだ。

 それは、田中さんのことが好きだからというだけではない。純粋に仕事が楽しいと感じられるレベルまで、田中さんが私を引き上げた結果だった。『好き』と『楽しい』の相乗効果は凄まじく、『田中さん』と『仕事』は既に私の中で切り離せないものになってしまった。

 楽しいから仕事を続けたい。仕事を続ければ田中さんとの接点が増える。接点が増えればより田中さんを好きになる。大好きな田中さんとの仕事は楽しい。楽しいから頑張れる。頑張れば仕事がより楽しくなる。楽しいから仕事を続けたい‥‥完全に雪だるま式自走運転が完成している。

 一見、田中さんを原動力として動いているように思えるこの仕組みを断ち切るには、今の仕事を手放せばそれで解決するようにも思える。でもその決断をするには、仕事自体を好きになり過ぎているのだ。今仕事を手放したら、絶対に未練が残ると感じる。

 当たり前な話、もし突然田中さんが担当から外れたとしても、そのまま普通に仕事は続けるし、それで極端に仕事のモチベーションが下がることもないと思う。凄く凄く凄ーく淋しくなるとは思うけど。

 それはつまり、田中さんが担当から外れない限り、私は田中さんへの恋心を膨らませ続けることを意味している。

 仕事と恋を切り離せなくて、結婚の優先度が下がっている。それが、今の私の状態だ。

 結婚しても仕事は続けられる。でも今は田中さんのことが好きだから、別の人との結婚なんて考えられない。

 かといって、私の結婚という超絶個人的過ぎる理由で、田中さんに担当を外れてもらうわけにもいかない。つまり、現状維持が最適解なのだ。

 このプロジェクトの終着点は、かなり先にある。どこまで私がこのプロジェクトに関われるかはわからないし、一企業の社長を勤める田中さんがずっと担当してくれるとも限らない。

 結婚を真剣に考えた時、私は必ず何かを諦めなければいけないのかもしれない。それはきっと、働く女性の多くが通る道なんだと思う。1~2年ならまだ余裕があるだろう。だけどその先はどうなんだろうか?とりあえず、心配してくれている両親には申し訳ないが、私はまだしばらく結婚できそうにない。

 因みに‥‥落雷にあう確率は0.0001%である。