翌朝、彼女からメッセージが届いていた。随分そっけない内容になんだか不安になってしまうが、とりあえずランチの約束を取りつける。

 昨日の感触は悪くなかった。橘の提案に照れてはいたが拒否感はなさそうだったし、交際はほぼ確定してると考えていいと思うのだが‥‥まあ会って話せばはっきりするだろう。

 翌日の彼女は、いつもと違ってフェミニンな雰囲気のワンピースを着ており、かわいさが倍増していた。そしてとろけるような笑顔を振りまき続け、そのかわいさは最早暴力である。

 思っていた通り、付き合うということに関してはすんなりと了承をもらえて安心した。問題はその後。話がご両親のことになった途端、彼女の顔が曇ってしまった。

 デートの話では嬉しそうにはしゃいでいたから、付き合うことを喜んでいるとは思う。結婚が嫌ってことなのか?

 そうか、そうだよな。結婚は一生の話だ。気軽な付き合いとは違って、好きでもない相手との結婚は考えられないと思うのは当然だろう。

 だったら、全力で彼女に俺を好きになってもらおうじゃないか。

 見合いが続く可能性があるのは正直いただけないが、それならどんな男も霞むくらい、俺が彼女にとっての一番になればいい。

 そうは言っても、会えるのは基本週末だけ。それも仕事があれば会えない時もあるだろう。

 ご両親に挨拶もできていない状態で外泊させるのは、後々のことを思えば心象が悪くなりそうであまりよろしくない。

 とりあえずは、日帰りできる範囲で人目を気にせず過ごせる場所へ連れて行き、彼女を甘々のドロドロにしてみよう。

 甘やかされて照れながらも蕩ける笑顔を俺に向ける彼女‥‥想像しただけで滾るが、そういうのは多分まだ早い。そこも慎重にいくべきだ。

 彼女を喜ばせるためのプランを考えるのはなかなか楽しい。もちろん直接彼女に会える方が嬉しいが、下手に動けばまた噂のネタにされかねないのだから我慢は必要不可欠である。

 どうにか土日休みを確保したくて仕事も普段以上に頑張るようになっていた。

 恋人のいる生活とは、こんなにも充実して幸せに満ち溢れているものなのか。これまでの俺は、人生を無駄遣いしていたのかもしれない。

 いや、彼女とだから幸せを感じられるんだ。

 彼女に好きになってもらうために頑張っていたつもりが、いつの間にか俺の方が彼女に夢中になっている。

 彼女は俺のことを少しは好きになってくれただろうか?好かれている気はするが確信は持てないまま、ひと月が経とうとしていた。