そんなことがあったなんて、口が裂けても絶対に誰にも言えないよ……。
私は、カラスが山に帰っていく夕焼け空を見上げた。
___"あの人"が突然私の部屋に現れてから、数日が経った。
ドラマの撮影もあって、一緒にいる時間は少ないものの、わかったことが2つある。
「ただいまー」
玄関の扉を開けながらそう言うけど、やはり返事はない。
今日は久しぶりに撮影がない日だから、学校からそのまま直帰できたんだけどな。
どこかに言ってるのかな。……そう思ったのも束の間。
「飯はまだですかーーー?」
リビングに入るなり、そんな声が聞こえた。
「まだだよ……今帰ってきたばっかなのに」
しかも、まだ夕方の4時だよ……!?
彼は、テレビの前にあぐらをかいてこちらを見上げている。
彼と数日暮らしてわかったこと、それは___
「はぁ?地上の飯は美味いんだよ、さっさと作れば?」
「はぁ……」
彼は、とんでもなく横暴だということ。本当にこの前拾った愛嬌たっぷりの猫だったの?ってくらい。
なんでも命令してくるし、意地悪だし。
私はスクバを置くと、そばにあったクッションを思い切り彼の顔に投げつけてやった。
「って、この俺様になにやってんのオマエ」