「空き巣……っ?」
「何言ってんの?寝ぼけてんの?」
「いたっ……」
目の前にいる男の人は、怪訝そうに眉根を寄せると、私のおでこにデコピンをする。
「……あぁ、猫の姿じゃねーのか」
「え……?」
猫の姿……って……?
そこまで考えて、ハッと息を呑む。
そうだ、昨夜拾って帰ってきた、あの仔猫は……!?
ベッドの下、クッションの下、テレビの裏。
「……いない」
どんなところを探し回っても、小さな黒猫はどこにもいない。
さぁぁ……と、顔から血の気が引いていく。
なんで……?どこに行っちゃったの……?
「あの黒い仔猫に何かしたの?」
私は立ち上がって、部屋の中心で仁王立ちをする男の人の前に立つ。
誰かもわからない人が、朝起きたら部屋にいましただなんて、普段の私なら怖くて気絶しちゃうくらいだけど。
今は、仔猫がいないこととこの男の人が関係しているとしか思えなくて、怒りの感情が湧いてくるくらい。
私よりも頭ひとつ分高い男の人を睨みつけると、男の人は「何言ってんだコイツ」とでも言うかのように、呆れたような表情をした。
「俺だけど」
「……は?」
「だから、俺があの猫だっつーの。昨夜は拾ってくれてどーも」
何を言ってるの……?とは思ったけど、それ以上に、この状況に妙に納得できてしまった自分に驚いた。