「うわ、朝からゾンビみたいな顔してんじゃん。撮影おつかれ」


「け、敬也……」


朝。

いつもの通学路は、私の脳内とは裏腹に静かだ。


「昨日帰ったの遅かったわけ?」


そんな私の隣で眠そうにあくびをするのは、小学校から一緒の友達、落地敬也。

サッカー部の主将で、エース。こんがりと焼けた肌が、不思議と暑苦しくなくて、むしろ爽やかに見えてかっこいい___らしい。



「そんなことはないんだけど、ちょっとね。あはは……」



脳裏に今朝の出来事が蘇る。

やばい、そのことで頭がいっぱいで今日の授業、絶対内容入ってこないや……。


重苦しいため息を吐きたくなったのは山々だけど、隣に敬也がいるので飲み込んでおく。


「?まあいーけど、無理だけはすんなよ。……俺がいるんだから、頼れ」


「はぁーい」


最後の方なにか言っていたけど、声が小さくて聞き取れなかったな。

でもまあ、いっか。と、適当に返事をすると、隣から「テキトーに返事しただろ!」そんなツッコミが入った。


「あはは、わかってるよ」


「ほんとかよ?ただでさえ仕事で忙しいんだから___」


「ほどほどに、でしょ?もう聞き飽きたってば」


何事も「ほどほどに」なんて言葉を敬也はよく使うけど、そういうわけにもいかない時がある。

今はどちらも頑張り時で、ここでへばってたら未来なんてないも同然なんだから。


私は、ふぅー……と深呼吸をして心を落ち着けようとするものの、今朝のことが頭から離れないでいた。