「……なんつーやつ?」
「オムライス」
「ふーん」
彼は、物珍しそうに卵の部分をスプーンで掬い上げると、パクリと口に運ぶ。
とたんに、パァ……と輝く瞳。
「どう?」
「……まあまあ」
そんな言葉を聞いて、思わず笑ってしまう。
素直じゃないなぁ……。美味しいって言えばいいのに。次々にオムライスを幸せそうに口に運んでいく彼を見ていると、なんだかこっちまで幸せな気分になってくる。
……意地悪で乱暴で、人を不幸にさせてしまうようなイメージを持つ悪魔だというのに。
自分も食べよう、とスプーンを手に持とうとした時だった。
ヴーッ……とテーブルに置いていたスマホが鳴る。
電話かな……?
スマホのディスプレイには『今井』という文字が写っている。
「もしもし!白川です」
コホンと軽く咳払いをしたあと応答ボタンをタップして、私はトーンをひとつ上げた声を出した。
『あ、詩ちゃん?急で悪いんだけど、また新しい仕事が来週から___』
「わかりました!……はいっ、スケジュール調整よろしくおねがいします!」
どうやら来週から、また新しい仕事が入るらしいから今週中にでも打ち合わせがしたいとのことだった。