「どう見ても、今のはカナがおれを助けただろうが!
 オマエたちの目は、節穴か⁉ 
 ちゃんと、見てたか⁉」



 観客たちは、ちらちらと顔を見合わせ、口をつぐむ。



「なんでもかんでも、
災いにして、カナに押しつけやがって……! 
何が、魔女だ」



 ひとりひとりの顔をにらみつけ、おれは続ける。



「本当におそろしいのは、
事故をだれかひとりのせいにする、オマエらじゃねーか!」



 くそ、涙が出てきた。

 その時、くい、と袖(そで)をカナに引っ張られた。



「マイク、貸して」



 言われるままに、カナにマイクをわたす。



「わたしは、魔女です」



 再び、ざわめく会場。

 だが、すぐに静かになった。

 みんな、カナの声に耳を傾けている。



「わたしは、たぶん、
外来語で言う『予知夢』を見ることができます。
これから起こる事故や事件が、わたしには、たまにわかるんです」



 ひゅ、と息をつき、カナは話し続ける。



「それは、間違いなく、
魔女の力と言っていいでしょう。
でも、わたしは……、みんなを、守りたかった」



 だんだんと声を出すことに慣れてきたのか、
 カナの声が大きくなる。



「この事故も、夢で見ました。
わたしは、リヒトくんを助けるかどうか迷った。
だって、彼を助けても、きっとわたしは魔女裁判送りになって、
重い刑を受けるに違いないから」



 会場は完全にカナにひきこまれていた。

 それくらい、カナの言葉には力があった。