初めて聞く、カナの声。

 久しぶりに声を出したからだろう。

 それはかすれていて、小さくて、弱々しい。

 でも、今まで聞いた、どの人よりも耳になじむ、心地いい声だった。



「けほっ、ケガ、ない?」

「ああ」

「よかった。間に合った」

「助けてくれて……」



 ありがとう、と続けようとした時だった。



「魔女がいるぞ! 無理矢理ここに入り込んできた!」



 だれかが叫んだ。



「何⁉」

「魔女⁉ マジで?」

「あれ、落ちてきたの、スポットライトだよな?」



 ざわざわと会場がざわめく。



「災いだ!」



 だれからともなく、そんな声が上がった。



「きゃあああ!」

「逃げろ!」

「落ち着いて、落ち着いてください!」



 パニックになる人々。



「魔女が、スポットライトを落としたぞ!」



 ……は? 何を言ってるんだ。

 とにかく、早急にこの場をしずめないと。

 このままじゃ、カナが危険だ。

 辺りを見回す。

 あった! さっきまで持ってたマイク。

 これで……。



「静まれえええぇぇぇっ!」



 おれは、腹の底から大声を出した。

 キイイイィィィン! と、マイクがハウリングする。

 騒いでいた人たちは、ぎょっとして動きをとめた。

 おれは、そんな会場の人々に向かって、こういった。



「オマエら全員、バカか?」



 しん、と会場が静まる。