ハッと気づく。

 わたしは、座り込んで、木にもたれかかっていた。



 今のは……、夢?



 ウソでしょ、リヒトくんが……、スポットライトにつぶされるっていうの⁉

 ミーン、ミーンと、セミの鳴く声が、やけにうるさい。

 それよりうるさいのは、わたしの心臓の音だった。

 だって、よりにもよって、こんなこと……。

 これは、ただの夢? それとも、「魔女の夢」?

 どっちなの⁉

 ばっと腕時計を見る。



 十時。



 モニターでは、まだ他のグループが歌を歌っている。

 はあ、はあと息が荒くなっていく。

 どうしよう。

 どうしよう、どうしよう。

 リヒトくんが、死んじゃうかもしれない。

 ぎゅうっと着ているTシャツをにぎりこむ。

 ううん、これが、魔女の夢って保証は、どこにもない。

 ただの夢かもしれない。

 そう言い聞かせても、心が叫ぶ。

 これは、必ず現実になると。



 十時三分。




 落ち着いて、カナ。

 よく考えよう。 

 これで、リヒトくんを助けに行ったら、どうなると思う?

 助かっても、助からなくっても……。

 わたしがあの場に行って、スポットライトが落ちてきたら、
 それはわたしがおこした災いとみなされる。

 そうなったら、魔女裁判でもっと重い刑になるに決まってる。

 もし、『紅蓮』の刑……、火あぶりの刑になったら、
 生きたまま焼かれるっていうじゃない!