「キミの気持ちは、シンガールのミミから聞いてたよ。
だからこそ、リヒトを憎んでしまうのもわかる」



 どういうこと?



「やっぱり、知らなかったか。
キミがミミに歌わせてるものは、
みんなわたしにデータとして送られてるんだよ」



 ……えっ。

 ということは、アレも聞かれていたってこと?

 わたしの、リヒトくんへの……、愛の歌。

 うわあああ、恥ずかしい!

 ぼしゅうっと顔が赤くなるのがわかる。

 そんなわたしを、ほほ笑ましそうに火野さんは見つめていた。



「わたしの話は、これでおしまい。悔いのない選択を。
……巻きこんで、悪かったね。
さ、行きな」



 わたしは立ち上がり、ぺこりとお辞儀をして、階段を上って行った。

 上の階でリヒトくんがいるかと思ったけれど……。

 いなかった。

 ほっとすると同時に、イラッともする。

 うれしいようで、とても悲しい。

 どうしよう。

 この、十一日間を、どうすごせばいいんだろう。

 途方に暮れてしまう。

 ……そうだったよね。だれも、こたえてくれない。

 こたえを決めるのは……、いつだって自分なんだから。

 わたしは、自分の家へと、ゆっくり歩みを進めた。