「しばらくもめて、わたしが折れて……。
だから今日ここで、
真実を話す機会を設けてやったんだよ」



 そうだったんだ……。

 じゃあ、きっともうここで、リヒトくんとはお別れ、だよね。

 それはちょっと……、ううん。

 すごく、さびしい。



「さびしいか?」



 心を見透かされて、ハッとする。

 ぶんぶんと首を振ると、ふふと笑われた。



「リヒトのやつ、地区予選で歌うってさ」



 ……え⁉

 確か、地区予選は……、七月三十一日。

 今日が二十日だから、リヒトくん、
 今日をぬいてあと十一日もこの国にいるの⁉



「この十一日間は、キミへの猶予(ゆうよ)だと」



 猶予……?

 意味がわからなくて、首をかしげる。



「キミはこの十一日で、考えてくれ。
リヒトをスパイとして突き出すか、だまっているか。
それが、キミを裏切ってしまった、リヒトなりのけじめだ」



 想定外のことに、あ然とする。

 いろんな感情の色を混ぜてぐちゃぐちゃになったパレットに、
 また新たに何色も絵の具をぶちまけられたみたいだ。

 だって、そんな。そんなのが、けじめだなんて。

 それを、わたしが決めないといけないなんて。



「まあ、キミはリヒトに復讐する権利は十分あるからね。
 利用された、もてあそばれたと言ってもいい」



 利用された、もてあそばれた……。

 そう、なのかな。

 ぐるぐるして、わからなくなる。