リヒトくんの、長い、長い独白(どくはく)が終わった。

 リヒトくんと、火野さんがスパイ。

 ふたりは外国人。

 ふたりの目的は、この国の開国と、魔女制度の廃止。

 その目的を果たすために、リヒトくんはわたしを裏切った。

 ……情報量が多すぎて、頭がくらくらする。 

 外国人は、バケモノみたいって聞いてたけど……。

 それは、ウソだったんだって、ぼんやりと思った。 



「魔女じゃなくて、カナ。
カナのために、なんとかこの国の魔女制度をなくしたい。
そう、思うようになった。
おれの果たしたい目的は……、
カナのおかげで、血の通った、信念になったんだ。
だから、キミを裏切ってでも、スパイとしてつかまるワケにはいかなかった」



リヒトくんは、そう言っていたけれど……。



【話はわかりました。
それでも、リヒトくんがわたしを裏切ったことに、
変わりはありません。
わたしは、リヒトくんを……、もう、信じられない】



 ノートに殴り書き、リヒトくんに見せる。

 リヒトくんは悲しい顔をして、「わかった」と、うなずいた。

 胸が、ズキズキと痛む。

 泣いてしまったから、目元も熱くて痛い。



【お話はこれだけですか? では、失礼します】



 今度は火野さんにノートをつきつけた。



「カナ。ちょっと待った。わたしからも話がある。リヒト抜きでな」



 話?

 わたしはもう、聞かなくてもいい。