言い訳にしかならないけれど、
 おれがスパイだとバレたら、つかまったら、
 目的が果たせなくなるかもしれない。

 だから、おれは……、
 おまえを、裏切って、あの芝居を仕掛けたんだ。

 おれたちの、目的を果たすために。



 ……目的が、何かって?



 カナ、よく聞いてくれ。

 おれたちの目的は、この国の開国と、魔女制度の廃止だ。

 おれは、正直、上から目線でこの目的を果たそうとしていた。

 鎖国して、とじこもったカタイ頭のやつらと、おかしな習慣。

 それを、ぶっ壊して、もっといい方に発展させてやるって。



 でも……、カナに、出会えた。




 カナに出会って、おれの気持ちは変わったんだ。

 カナとの時間は、おれの宝物だよ。

 しゃべれなくても、いろんな工夫をして、おれに気持ちを伝えてくれたね。

 カナの母さんと、気持ちが通じあった時の涙。

 あんなにキレイな涙を、おれは見たことがない。



【わたしは、リヒトくんを友だちだと思ってる。
友だちを、不幸にしたくない】



 そう、言ってくれたこともあったね。

 それが、おれにとって、
 どんなにうれしいことだったか、想像できる?

 魔女じゃなくて、カナ。

 カナのために、なんとかこの国の魔女制度をなくしたい。

 そう、思うようになった。

 おれの果たしたい目的は……、
 カナのおかげで、血の通った、信念になったんだ。

 だから、キミを裏切ってでも、
 スパイとしてつかまるワケにはいかなかった。

 ああ、未練がましいな。

 でもな、カナ。

 おれは、キミを……。

 キミを、救いたかったんだ。

 だって、おれは……。

 ……いや、なんでもない。

 これで、おれの話は終わりだ。