教室にもどると、みんながざわざわしていた。

 わたしが来ても、空気みたいにあつかわれる。

 リヒトくんのつくったあの「生きやすい」雰囲気は、
 あっという間に消え去っていた。



「やったじゃん、リヒト!」

「おめでと~!」



 ぼんやりとそんな声を聴きながら、わたしは自分の席へ向かう。



「まさか、あの歌が予選突破するなんてな!」

「ね。地区予選、○○ホールで歌うんでしょ? 
絶対行くから!」



 ……え?

 席につき、急いでスマホで検索する。

 愛の歌コンクールの、予選突破者。

 そこには……、リヒトくんの名前があった。

 それを確認した瞬間。

 ぶわっと、
 曲づくりをしていた時の楽しかった日々がよみがえってきた。

 図書準備室で、
 コッソリとみんなでお菓子を食べつつ作業したこと。

 初めて聞いた時、
 リヒトくんのあまりの美声にわたしもユキちゃんも驚いたこと。

 ユキちゃんの詩がすごく切なくて、
 わたしもリヒトくんも感動したこと。

 それから、三人で詩をよりよくしようと議論したこと。

 みんな、みんな……。

 大切な、思い出だった、のに。

 ぼた、と涙がスマホの画面に落ちた。

 瞬間、メッセージが届いたことがわかる。

 だれかはすぐわかる。

 火野さんだ。

 それ以外の人と、わたしは連絡先を交換できない。

 わたしはメッセージを確認して、思わず目を見開いた。