すっとつきつけると、火野さんがざっと敬礼する。



「失礼しました。魔女監視庁、特別職員の方でしたか」



 とくべつ、しょくいん?

 その言葉を頭が理解してくれるのにしばらくかかった。

 ユキちゃん。

 わたしの昼食仲間の、優しい子。

 それが、今はわたしをさげすんだ目で見つめている。



「今回のことは、なんていうか……。
お芝居だったんですよ。
魔女に、自分の立場を知ってもらうための、ね」



 ユキちゃんの声は、明るく、楽しそうにはずんでいた。



「魔女さん、覚えてます? 
この会話」



 ただひたすら呆然としてるわたしに、ユキちゃんはスマホを操作してみせた。



『その本音は政府に反する言語道断のものでしたけど! 
これは、わたしがちゃんと監視してないと、ダメですね』



 音声が、流れる。

 これ、あの時の……。

 ユキちゃん、もしかして盗聴してたの⁉



「覚えがあるようですね。
この次の日、わたしは身分を隠したまま、リヒトさんに接触し、
本心をさぐりました。
すると……、彼、おもしろいことを言ったんです」



 ユキちゃんは、残酷なほどきれいな笑みを浮かべている。



「これは、魔女をだますお芝居なんだって」



 ……ウソだ。

 ウソだよ。リヒトくんが、そんなこと言うはずない。

 だって、彼は、思いやりがあって、賢くて、優しくて……。

 わたしの、好きな人、なのに。



「ここからはおれが説明しよっか」