とまどったように火野さんがつぶやいた。

 そう! そうだよ!

 なんだかわかんないけど、これはチャンスだ!

 わたしは必死に手でバツ印をつくって、
 火野さんにつきつけた。

 わたしはこの曲に参加してない。



「われわれの情報に、誤りがあったということ? 
まさか、そんな……」



 そう! そうだよ!

 そういうこともあるんだ。

 だから、さっきのリヒトくんの音声も、ニセモノだよ!

 そういうことにすれば……!

 ね! リヒトくん!

 そういう仕掛け、なんでしょ⁉

 そう思ってリヒトくんの方を見ると、ふい、と顔をそらされた。

 ……え? 



「うふふ、必死ね」



 くすくすとした笑い声。

 だれ⁉

 みんなの視線が集中する。

 視線の先にいたのは……、ユキちゃんだった。



「安心して、火野監視士。
あなたの把握してる情報に、誤りはありません。
この曲は、わたしが命じて他の中学の子につくってもらいました。
作詞はわたし、ですけど」



 いつものユキちゃんからは考えららえないような、堂々としたふるまい。



「だって……、魔女のつくった曲を、送るワケがないでしょう」



 ユキちゃんは、冷たい笑顔を浮かべている。

 ……、待って。状況が、理解できないよ。



「どういうことです?」

「どうもこうも、こういうことです」



 火野さんの問いに、
 ユキちゃんは胸ポケットから手帳のようなものをとりだした。