こんなに幸せなことが、あってもいいんだろうか?

 早朝と昼休み、放課後の下校時刻ギリギリまでは、
 図書準備室で曲作りの時間になった。

 毎日、わたしとユキちゃん、リヒトくんで、
 いろいろな案を出しあったんだ。

 曲調は明るめがいいか、しっとりした方がいいか。

 曲の速さはどのくらいがいいか。

 どんな「愛」をうたうか。

 家族愛、友愛、恋愛……、人類みんなに対しての愛、もある。

 そこで出た意見をまとめて、わたしは曲作りをした。

 しっとりとした、ゆったりめの曲。
 いわゆるバラードだ。

 つける詩は、恋愛にすることになった。

 ユキちゃんは
 「やはり、一般受けは恋愛が一番かと。がんばってみます」って、
 照れながら言ってくれた。

 そして一週間が経ち……。

 とうとう、今日曲が完成したんだ。



「すごい……、なんていうか、とても心地いいです」

「耳に残るフレーズだな。いい曲じゃん」



 ユキちゃんとリヒトくんが、
 それぞれわたしの曲の感想を述べてくれる。

 こんな風に、人に曲を聞かせたのは初めてだ。

 生で聞ける感想が、こんなにうれしいものだなんて。



「締切まであと一週間……、がんばりましたね、カナさん。
 あとは、わたしが詩をつけます」



 ユキちゃんはイヤホンをして、集中して曲を聴き始めた。

 わたしはひとまずほっとする。

 曲を、書き上げたんだ。



「お疲れ、カナ」