リヒトくんに呼びかけれて、ハッとする。
何考えてるんだろう、わたし。
なんて、ひどいことを。
ユキちゃんがハブられてて、
つらい目にあってることを知ってるのに。
「大丈夫? カナさん。
リヒトさんのことで、ビックリしすぎちゃった?」
ユキちゃんの問いに、こくりとうなずく。
ああ、ウソついちゃった。ちくりと胸が痛む。
「そうよね。
まったく、政府への反逆を発信しようとするなんて……。
これだったら、ひと夏の思い出、の方がいいに決まってるわ」
うんうん。……って、あれ?
「魔女は勉学に励むことが義務、
とあるけど、音楽だって、勉強の一種よね。
これ、リヒトくんの『魔女に関する一考察』の参考にな
らないかしら?」
……ユキちゃん?
え? どうしちゃったの?
ユキちゃんは、
おろおろしてるわたしの目をひたと見つめて口を開いた。
「カナさん。
あなたさえよければ……。
作曲、担当してくれない?
わたしと、リヒトさんと、一緒にコンクールに出ましょう!」
え。
えええ!
ユキちゃん、さっきまではあんなに否定的だったのに。
いったい、どうして……?
リヒトくんも、不思議そうな表情をしている。
「ふふ。
どうしてわたしが乗り気になったか、知りたいですか?」
いたずらっぽくユキちゃんが笑う。