「何、考えてるの? 
もしこの言葉をだれかが聞いていたら、通報されますよ。撤回して!」

「ヤダ」

「はあ⁉」

「ふはは、こんなに感情を出したユキ、初めて見た。
こっちの方が、ずっといいよ」



 リヒトくんはこんな状況の中、笑ってみせた。

 あ、ダメだ。

 もしわたしが、今、
 こんな顔をされて、そんなことを言われたら……。



「な、何をバカなことを!」



 ユキちゃんの頬が、赤く染まる。

 へにょんと下がる眉に、困ったようにゆれる瞳。

 ……ほらね。

 こんなことされたら、……好きに、なっちゃうよ。リヒトくんのこと。 



「ユキは、おれのことを通報しないの?」

「……もう少し、様子見です。
不確かな情報で監視庁を混乱させても悪いですから」



 ユキちゃんは、早口な小声でもごもごと言った。



「……そっか!」



 リヒトくんがニッと笑い、ユキちゃんもほほ笑みを浮かべる。

 なんていうか……、お似合いの、ふたりだな。

 わたしは知ってる。

 整った顔のリヒトくんに負けないくらい、
 ユキちゃんは美人だってこと。

 なぜか、前髪を長くして隠してるみたいだけど……。

 ホントは、百合の花みたいに凛としているんだ。
 
 このふたりが付き合ったりしたら、それはとてもステキなことだよね。

 そう思うのに、胸が痛い。

 わたしが魔女じゃなければ。

 クラスでハブられてもいいから、『一般人』だったら。

 わたしは……。



「カナ?」