すぐに、
 「リヒトくんはそんな人じゃないよ!」
 って否定したかったけど……。

 そんなこと、ノートに書けないくらい、
 場の空気がぴんと張りつめていた。

 リヒトくんは、ユキちゃんの厳しい言葉に目を見開いている。

 でも、すぐにふっと顔をゆるめて、
「自己満足、か」とつぶやいた。



「違うとは言えないな。この誘いは、おれの自己満足だ。
ユキの言う通り、話題になればいいと思ってる」



 そんな……。

 ユキちゃんは、冷たい表情でリヒトくんを見つめている。

 まるで、いつものユキちゃんじゃないみたいだ。

 すごく、怖い。背中がぞくぞくする。



「話題になって……、
この国、いや、この学校、おれたちのクラスの人々に届くだけでもいい。
知ってほしいんだ。
人気者も、魔女も、いじめられっ子も……。
みんなが、『普通の子』なんだって」



 わたしはリヒトくんの凛とした表情に、見惚れてしまう。

 ユキちゃんの眉がピクリと動いた。



「撤回してください。わたしはともかく、
魔女は、『一般人』ではありません」

「……あ~、もう! 
『一般人』とか『魔女』とかじゃないだろ! 
みんな、『ただの人間』なんだよ!」



 がしがしと頭をかきむしりながら、リヒトくんは叫んだ。

 ユキちゃんの顔色が変わる。

 わたしも、思わず立ち上がった。