「これ、面白そうだと思わねーか?
今からだと締切まで二週間だから、
ちょいキツイかもだけど」
「愛の歌……」
ユキちゃんは自分のスマホで検索して、
同じページにたどりついたみたいだ。
「オリジナル曲……。
リヒトさんって、歌唱はともかく、
作曲とか、作詞とかできるんですか?」
「いや、無理」
「……じゃあ、ダメじゃないですか」
もっともなツッコミ。
「ふふふ、作曲者なら、適任がいるぞ。カナだ!」
びしっとわたしを指さすリヒトくん。
まあ、だいたい想像はできたけどね……。
さて、どう断ろう……。
「そしてっ、作詞はユキ!」
……えっ。ユキちゃん⁉
ユキちゃんも予想外だったのか、目をまん丸にしている。
「ユキって、文芸部なんだろ?
去年の文芸誌に載ってた、『バラ姫さまの悩み事』読んだよ。
めちゃくちゃ面白かった」
「な、なんで。その、そんなの読んで……!
タイトルとか、言わないでください」
さーっとユキちゃんの頬が赤く染まっていく。
おお、なんか、照れてるユキちゃん、レアだ。かわいい。
そっか。ユキちゃん文芸部だったんだ。
もう二ヶ月近く一緒にお弁当食べてたけど、知らなかったな。
「だからさ、作曲がカナ。
作詞がユキでさ、おれが歌唱。
三人で、曲つくらないか?」
ハッキリ言って、すごく魅力的な提案だ。
わたしは歌えないし、「愛」についての作詞も自信がない。