思いやりのあるところも、
 火野さんが見逃してしまうような仕掛けを思いつく賢さも、
 その賢さを、正しく使える優しさも。

 全部。全部が好き。

 そう伝えられたら、どんなにいいか。

 わたしは、ふう、とため息をつくと、指をスマホにすべらせた。



【わたしは、リヒトくんを友だちだと思ってる。
友だちを、不幸にしたくない】



 ちょっと長い文章を、リヒトくんは真剣に読み進めている。

 そのひたむきな表情を見るだけで、幸せだなあって思える。

 心がぽかぽかするんだ。



「よかった。友だちだと思ってるのがおれだけじゃなくて」



 ぽつり、とリヒトくんが言った。

 そういえば、わたし、伝えてなかったっけ。



「うん、カナの気持ち、よくわかったよ。
確かに、おれ、魔女であるカナに近づきすぎてるもんな」



 そう、だから……。 

 わたしはもう一度、
【もう、わたしに近づかないで】という文字を指さした。



「友だちだから、カナはおれに近づいてほしくないんだな。
おれを、不幸にしたくなくて」



 こくこくとうなずく。



「でもな、カナ。
おれも、友だちだから、カナと一緒にいたくて、
カナを幸せにしてあげたいんだ」



 ……え?

 幸せにしてあげたい……。

 わたしを?

 リヒトくんは「お互い、ゆずれないよなぁ」と苦笑した。



「特別職員のウワサは聞いてる。でも、きっと大丈夫だ」



 大丈夫って言ったって……。

 そんな、根拠のない自信はどこから来るの?



「だからさ、カナのそばにいさせてくれ。な?」



 ……ズルいよ。

 そんなさみしそうな表情で、こんなこと言われたら……。

 うなずくしか、なくなるじゃん。

 わたしがうなずいてみせると、
 リヒトくんは満足げに笑ったのだった。