なんていうか、オオカミ、っぽい……。

 ……。

 …………、金色の、オオカミ?

 夢で、見た……。

 ざわざわと心に嫌なノイズが走る。

 ああ、まさか。

 この男の子が、あの金色のオオカミなの?

 じゃあ、電車の中で見たあれは……、「魔女の夢」?



「あれ、その首輪……。きみってもしかして……、魔女?」



 男の子の視線が、わたしの首元の首輪に向かう。

 気づかれた。

 ひゅ、と息がもれる。

 おびえた目をされるのか、汚いものを見るような目をされるのか。

 いつもなら、そんなの慣れっこだから、気にしない。

 でも、この人にはそんな目で見てほしくなかった。

 だって、わたしを助けてくれたこの人のまなざしは、
 あの夢で見たオオカミと同じ、優しいものだったから。

 ああ、嫌だ。

 怖くて、男の子の顔が見られない。

 それなのに、バカみたいな考えが頭に浮かぶ。

 もしもあのオオカミのように、
 この人がわたしのそばにいてくれたら、なんて。

 「魔女の夢」が、「現実」になるように。

 ズキズキと胸が痛む。

 感情がぐちゃぐちゃだ。



 わたしを知ってほしい。助けてほしい。このまま手をにぎってて。
 だめだ。知らないで。かかわらないで。わたしからはなれて。



 正反対の思いが、ぐるぐると頭の中をめぐる。

 それでも、ひとつだけハッキリとわかることがあった。

 わたしと一緒にいたら、この人にきっとよくないことが起きる。



 わたしが、魔女だから。


そんなのは……、絶対に嫌だ!

わたしは男の子の手を振りほどくと、学校へ向かって全力で走りだした。

運命から逃げるように。