わたしはあまりに驚いて、ひゅうっと息をのむ。



「あんたの監視士に『教育』を受けても、
リヒトは改善しなかったんだって? 
だから……、特別職員が派遣されるかもって。
……いや、もうすでに近くにいるのかも」



どくん、どくんと心臓が嫌な音を立てる。



「おれは、リヒトのことを、友だちだと思ってる。
おもしれーし、いいやつだし。
でも、魔女であるあんたに近づきすぎて……。
心配なんだ」



 苦しそうに顔をゆがめる佐野くん。

 ……そうだよね。

 佐野くんにとっても、リヒトくんは大切な友だちなんだ。

 リヒトくんはリヒトくんの人間関係を大事にしなきゃ。

 わたしみたいな魔女が、そこに入ったらいけない。

 わたしができることって、何だろう?

 やっぱり……、リヒトくんに近づかないことだよね。



「サトシ! 図書館入らないの?」



 五十嵐さんの声。

 見ると、
 廊下の奥から五十嵐さんがこちらに向かってくるところだった。



「わりぃ、マリカ。今行くから!」

「……何? 魔女と話してんの?」



 不機嫌丸出しで、五十嵐さんはわたしをにらみつける。



「違うって。掲示板見てたんだ」

「……ふーん」



 五十嵐さんは、
 もう興味を失ったように
 「ほら、行こう」と佐野くんの背を押した。

 残されたわたしは、わたしにできることを考えていた。

 リヒトくんは……、わたしの大事な友だちだから。

 わたしがそう思ってるからこそ……、
 はなれなきゃ、ダメなんだ。