「リヒトくん、今日の『教育』で考えたことをここで述べなさい」

「え~と、まあ、ひどい言われようだったな」



 リヒトくんはスマホをしまい、うんうんとうなずいた。



「この三年間、カナのことをずっと憎んでたって言ってたな。
それほどまでに、魔女を産んだ母親は、たいへんな目に合うんだな」

『この三年間、お母さんは、カナのことをずっと愛してたよ』



 リヒトくんの言葉にだぶって、お母さんの声が聞こえた。
 そっか。
 これが、お母さんの、本当の言葉なんだ。



「友だちなんて、魔女に必要ないもの。
魔女は勉学に打ち込み、その力をお国のために使うのが義務、だっけ?」

『友だちができたの? 
友だちは、大切なものよ。
あなたは魔女であっても、国にしばられないで』



 ああ、そうなんだね。

 お母さんは、わたしに友だちができたことを、
 よろこんでくれたんだ。

 それに、魔女とか、国のための義務、だなんて、考えなくていい。

 そう、言ってくれたんだね。



「魔女は、一生、幸せになれない。
わたしが許さないって。
アレは、相当カナを恨んでるね」

『魔女であっても、カナは幸せになってね。
わたしが許すから』



 幸せに、なっていいの?

 それを、お母さんは許してくれるの?

 うれしい。

 うれしいよ。



「最後、アレはすごかったな~。
カナが、『大好き』って言ったけど……。
もう、届かないんだな」



 そうだ。わたしを苦しめて、生きる希望を失わせた、あの言葉。



『わたしは、大嫌いよ。
あんたなんて、産まなければよかった』



 これは、違う。

 ホントのお母さんの気持ちは、こう。



『わたしは、カナを愛してる。
あなたを産んで本当によかった』



 ……わたしは、愛されてた。

 お母さんは、わたしを産んで、良かったって思ってくれたんだ。