「ここに来る途中で、
休憩できそうなベンチあったよな。
自販機も。
だから、ちょっと、飲み物買って休もう。
火野さん、カナの母さんが起きたら、教えてよ」



 そう言って、リヒトくんはわたしの背を押してくれた。

 確かに、緊張の連続でのどがカラカラだ。

 でもこれだと、
 火野さんに勝手に用事を押し付けた感じになるけど、
 いいのかな?

 ちら、と火野さんを見る。まったく感情がわからない瞳。



「ってことで、よろしくお願いしまーす」



 わわ、リヒトくんてば強引すぎない⁉

 そのままわたしはリヒトくんに
 押されるようなかたちで病室をあとにした。

 ついたのは、机やイス、ベンチがおいてある、結構広いスペース。

 きっと、患者さんたちが集まって、
 おしゃべりしたり、飲み物飲んだりするんだろうな。

 今は、わたしとリヒトくん以外だれもいない。

 わたしもリヒトくんも自販機で飲み物を買って、近くのベンチに座る。

 のどが思った以上にかわいていたみたいで、ごくごく飲んじゃったよ。

 でも、おかげで気持ちが少し落ち着いた。



「……なあ、ちょっと聞いていい?」



 リヒトくんは
「イヤだったらこたえなくていいから」
と前置きした。



「カナの母さんって、どんな人?」



 予想外の質問だ。

 うーん、どんな人、かあ。

 あ、そういえば……。

 わたしは、まだわたしが普通の女の子だった時のことを思い返した。