ひとり部屋の病室に通されると、
 お母さんはベッドの上で目を閉じていた。

 火野さんに向かって看護師さんが、
 「あと少しで目覚めると思いますよ」と言って去って行った。

 お母さん……。

 三年ぶりに見るけれど、かなりやせたみたいだ。

 過労で倒れるなんて、生活がたいへんなのかな。

 だって、お母さんは……、
 お父さんと、離婚しちゃったから。

 わたしのせいで。

 わたしが、魔女だって判決を受けてすぐに、
 ふたりは別々になってしまった。

 これは、前の監視士さんから聞いたことだ。

 その時の言葉がよみがえる。



「まあ、珍しいことじゃないわね。
あなたのお父さんは、魔女を、つまりはあなたを産んでしまった人と、
一緒にいるのがたえられなかったんでしょう。
あなたは、そういう存在なの」



 あらためて事実をつきつけられて、呆然としたことを覚えている。

 心を鋭いナイフで、何度も何度も切りつけられた感覚。

 悲しくて、悲しくて……。苦しくて、自分が許せなくて。

 でも、だれよりもひどい目にあったのは、きっとお母さんだ。

 だって、魔女(わたし)なんかを産んでしまったから。

 ごめんなさい、お母さん……。



「カナ、疲れてないか?」



 リヒトくんの声に、はっとする。